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指を舐めずにめくるべし

〜僧院の図書館〜




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●読書感想文。過去の日報と同一の内容も含まれています●
●未整理ゆえ本文は順不同です。作家名でのアイウエオ順。欧米の人名はファーストネームを基準●
●日付けは読んだ時期●
★文中の敬称は略しています★


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(in aiueotical order)

このページの最後の更新は:20020510

●アンソロジー「殺人鬼の放課後」(角川スニーカー文庫)
●稲生平田郎「アクアリウムの夜」(いのおへいたろう。角川スニーカー文庫)
ハリウッド脚本術
秋山瑞人「イリヤの空 UFOの夏 その1」(あきやまみずひと。メディアワークス)
●望月三起也「ジャパッシュ」(銀河出版 全一巻)
●諸星大二郎「栞と紙魚子の生首事件」(しおりとしみこのなまくびじけん。朝日ソノラマ)

↓〜2001年までのぶん
●大塚英志(おおつかえいじ)「物語の体操」(朝日新聞社)
●押井 守「獣たちの夜」(角川書店)
●乙一(おつ いち)「失踪HOLIDAY」(角川スニーカー文庫)
●笠井潔「天使は探偵〜スキー探偵 大鳥安寿」(集英社)
●古谷野敦「バカのための読書術」(ちくま新書)
●コリン・デクスター「ウッドストック行き最終バス」(ハヤカワ文庫)
●高見広春「バトル・ロワイアル」(大田出版)
●馳星周「不夜城」
●松本侑子「作家になるパソコン術」(筑摩書房)
三好万季(みよしまき)『四人はなぜ死んだのか インターネットで
  追跡する「毒入りカレー事件」』(文藝春秋)
綿矢りさ「インストール」(河出書房新社)
滝本竜彦「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」(角川書店)


●大塚英志「物語の体操」(朝日新聞社)
2001.09
 大塚英志の小説創作マニュアル「物語の体操」を読む。
 俺、こういう本をもっとはやく読みたかったな。鋭い内容。「体操」というだけあって、創作修行をエクササイズのレベルにまで分解している。さすがベストセラー作家さんは書くことがちがうねえ(やっかみ)。
 この本のなにが凄いって、大塚の専門学校での教え子たちの創作のレベルが高いところ。おもしろそう! と思えてしまうものが多い。設定やあらすじと、じっさいに仕上がった作品とはまたちがうわけですが、それでもね。おのが非才を嘆じる。教材用の死体配達人が主人公の設定も、それなりにおもしろい。もったいない。単行本2巻くらいでツマりそうな話ではありますが(^^)。
 ↑この死体配達人の設定にダウジングが出てくるんですが、あれってほんとうに科学的根拠があるんでしょうか。それとも経験とカンのなせるわざ? こっくりさんと同じく無意識?

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●笠井潔「天使は探偵〜スキー探偵 大鳥安寿」(集英社)
2001.03
 短篇連作集。割り切ったタイトル(^^)。見習うべし。

 「死体切断事件」がいちばん好きです。なぜだ。ああ、なぜひとは……。戦慄しつつ、構成の美しさに感動しました。

 商業的なタイトルのわりに、内容は本格推理。人物描写を多くして探偵のキャラを立てよう、という気持ちは作者にはないようです。でもさいきんわかりましたが、推理小説ってそれぞれの作品世界、事件の設定じたいがキャラクターなんですね。ミステリファンのかたにはなにをいまさらでしょうけど。

 以下、サマツですが。文中、空砲を撃った、ということばが出てきます。わたしも混同しがちなんですが、空砲は厳密に言えばカラの銃や大砲のこと……じっさいに弾頭が飛んでいく実包に対する、演習用のただ音や光が出るタマは空包。

 「白骨死体事件」のある部分でドキリとして飛び上がる。わたしはとんだ赤っ恥をかくハメになるのでは。あらためてじぶんの凡庸さを思い知らされました。ひとりごとです。忘れてください。

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●乙一(おつ いち)「失踪HOLIDAY」(角川スニーカー文庫)
2001.02
 ニュータイプ2001年3月号の作者インタビューと、添えられていた魅力のある表紙イラストが気になっていたので。インタビュー読むと、なんかヘンテコなひとだなあ、作家ってやっぱりかわりものなのかなあ、とチラチラ思ってました。「ついつい、たくさんの《ひっかけ》を入れこんでしまうんです」とあったので、ホホウ、ひっかけ、とも思ってました(^^)。でも表紙にも腰巻にもひっかけのヒの字もない。やるな……。

 書肆に行くと、ノベルスの棚の中にあってひときわおどろおどろしげな装丁の「石ノ目」の背表紙がこちらを睨み、乙一というなんと読むのかわからない筆名(変わった名前だからといって筆名とは限りませんが)もあいまって気にはなってました。この話から得られる教訓:やはり筆名と装丁は大切
 私見ですが、ユーモアのセンスには暗いものと明るいものの二種類があります。すべての読書子よ喜べ、われわれはその両方を持つ作家を手に入れたのである。断じて手放してはならぬ。願わくばヘンな書評家がまたトンチンカーンなことを書いて本来なるべき読者が手にとらなくなる、なんて事態が発生しないよう祈るばかりなのである。各方面で話題になってるらしいし、そんなことはないですか。

 巻頭に短篇「しあわせは子猫のかたち」がおかれ、もう一本の中篇が表題作。短篇はやさしさにあふれ、冷酷かつ汚れつちまつた悲しみのゴヤでさえ心の洗われるとてもいい話です。やさしさがまぶしい。あっ! と叫んでしまった。うまい。でも一ケ所、? と思うところあり。例によってわたしの読解力の無さのせいでしょう。

 表題作。……三畳間は生活するにはきっと苦しいんでしょうけれど、とても落ち着く空間ではあります。とにかく失踪する富豪の令嬢ナオと、使用人のクニコさん(なぜかギブンネームがすべてカタカナ)ふたりのキャラが非常にすばらしい。セリフもたまらなくいい。ぼくは思わずうなってしまう。
 口絵のクニコさんがメイドの服装なので笑ってしまった。イラストのイメージが、読者の想像の余地がないくらいにドンピシャリすぎます。つぎからつぎへと輝く才能があらわれますね……。日本はそう簡単に沈没しません。

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●押井 守「獣たちの夜」(角川書店)
2001.02
 疑問に感じていた投石に関する記述あり。うーんなるほど、だから投石するわけか……。勉強になりました。
 おこがましくも言葉狩り。文中に出てくる弾丸の種類、フォロー・ポイントとあります。ゴヤは乏しい軍事知識しかありませんが、たしかホロー・ポイントhollow pointでは。弾頭がホローすなわち中空になっていて標的にあたると中でブチャっと弾けるらしい。ワイルド7「地獄の神話」でも確かフォロー・ポイントという表記になっていたような。ただワイルドが描かれたころは、まだ今みたいに資料が豊富でなかったですしね。最新版では直されているかもしれません。以上うろ覚えで失礼。まちがっていたらごめんなさい。
 ……まあプラットフォームはふつうホームって言うし、fastfoodはたいていファーストフードとのばすしね……。このテのは言い出すときりがない。
 章のタイトル、「同盟」に「パルタイ」とルビが振ってあり、ドキリとする。倉橋由美子に同名の小説がありますね。パルタイはドイツ語。パーティー、つまり「党」の意味。なんの党なのかは諸兄々のご想像におまかせします。まったく予備知識がなく、パルタイっていう語感から「ファンタジーかしら?」となぜか思って読んでみるとまるで違った。いま読むとファンタジーと言って言えなくもないかもしれません。
 倉橋由美子はどちららかと言えばパックマンみたいな絵の「ぼくを探しに」の翻訳や「大人のための残酷童話」とかで有名なひとでしょうか。わたしは未読ですが。
 あれっ、「獣たちの夜」の感想になってねえや(^^)。

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●馳星周「不夜城」
 読んだとき、これって、わたしの考えている「小説」とは違うものだな、と思いました。決してつまらないわけではなく、むしろすごく面白いんだけど。無人の香港上海銀行(ロイズ保険本社ビルでもいいけど)みたいな感じ。ああうまく言えない。でも、このテキストを叩き台にして、小説の形にして欲しいな、と思ったのは事実。馳氏、「チョコレート戦争」のロバート・コーミアがお好きなんですよね。コーミア「真夜中の電話」の解説鼎談(?)に出ていらして、おや、と思いました。

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●三好万季(みよしまき)『四人はなぜ死んだのか インターネットで追跡する「毒入りカレー事件」』(文藝春秋)
もしできるなら、とりあえず1万册ほど買って街のみんなに配って歩きたい、そこまで思わせる本です。
 書かれた当時、著者は中学3年生。学校の課題として書かれた論文です。カレー事件の被害者の死因にしぼった調査の記録。著者のお兄さんは、史上最年少で司法試験に受かったひとなのだそうで、妹である著者も天才少女なのでしょうが、この際書き手の年齢はさして重要ではありません。専門家と称するひとたちが束になってもかなわない、名探偵が実在するのだな、というのが正直な感想。事件の第一報を聞いた時点で「カレーで食中毒、というのはおかしい」とまず疑うところに非凡さを感じます。かなり早い段階で、著者は使用された毒物が青酸化合物でなく、ヒ素であることを喝破します。
 この本の内容がどこまで正確なのかはわかりませんが、まず読み物として猛烈に面白い。ストーリーが予想外に展開する探偵小説のよう。熱いハートと冷たい頭脳を持った著者は、はかったかはからずか、事件に関わった専門家のみならず、日本人の考え方、日本のシステムそのものをも痛烈に批判しています。わたしが駄文をつらねてもしかたがないので、ぜひご一読を。

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●松本侑子「作家になるパソコン術」(筑摩書房)
 なかなかに有用な内容です。ネット検索のしかたとか参考になりました。本文イラストは水玉螢之丞。趣味が爆発、とまではいかないけど、やっぱり水玉節(?)。パロディのネタ、「ゼルダの伝説」はまだしも、「夢のクレヨン王国」に「赤ずきんチャチャ」。容赦がないです。かててくわえて「お師匠さまは魔物!」までいくと、この本の読者の何%がわかるんだろう。いや、わからなくてもべつだん困りませんけど。やっぱり爆発か。
 タイトル、なんか作家修行のレクチャー本のようですが、せめて副題に「作家の日常業務におけるパソコンおよびネット活用術」ってつけるべきだよな。でもま、本の題名はそういうものなのでしょう。出すからには、ファンのみならず、フリのお客さまにも手に取って見ていただける可能性を増やさねばなりませんものね。

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●コリン・デクスター「ウッドストック行き最終バス」(ハヤカワ文庫)
2001.01
 ……探偵役の奇矯なモース警部、頭のいい部分はともかくみっともないところがまるでじぶんを見せられているような。優秀な頭脳の持ち主でもあんな精神生活をおくってるんですかね。だとするとボンクラとしてはちょっとほっとします。……警部のあの行動はアレのためだったのか、とハタと気づき、あっ、と声をあげてしまう。その一点において美しい小説です。いろいろ言いたいことはありますが。
 わたしは上から数えて何%までに含まれるんだろう。30? 40? 50?

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●高見広春「バトル・ロワイアル」(大田出版)
2001.05
 とてもおもしろいです。いい話じゃん。爽やかなラブストーリーだ。そのラブの部分をもうほんの少し読みたかったです。「中学生同士が殺し合う不快でけしからん小説」ってのは誤読ですね。いやまあ、どう読むかは読者の自由ですが。
 殺人ゲームをおもしろく書いているのは確かだから、そこを批判されるのはある程度しかたないけど、重要なのは、枝葉を切り払って残る、純愛と友情を信じる少年少女たちのひたむきな姿勢。一見、時代に逆行してるけど、だからこそひとの胸をうつのです。どの子たちもあんまりイマフウじゃないですもんね。
 「週刊ブックレビュー」で「ズッコケ三人組」シリーズの作者が「『バトル・ロワイアル』はいい小説だ。息子にも薦めた」と言っていましたが、読んでみてなるほど、ここまで古典的(いい意味ね)で直球勝負か、と感心しました。読む前に勝手に作っていたイメージとはだいぶん違っていました。

 これを落とした審査員の鼎の軽重が問われますね。たしかに力の入ったキャラと、そうでないのとのリアリティの差が激しいのが気になるし、オカマのひとの描写が、こりゃあないだろう、というセンスだし、そういう力量の部分を批判して、の結果ならまだしも、ですが。

 すでに多くのひとの指摘するところでしょうけど、設定に限っていえば望月三起也の「ワイルド7」や「四つ葉のマック」の影響がありますね(タイトル正しい? きちんと読んでないんです(^^;)。ワイルドのメンバー選抜試験を髣髴とさせる。あるいはガールフレンドとともに死んでいく死田さんとか。わかりやすいキーワードも入れてあって、モトネタをぜんぜん隠していないですが(^^)。トリックもどことなし望月三起也っぽい。どうせなら、武器の中にコルト・ウッズマンや南部十四年式も入れてほしかったです。

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●古谷野敦「バカのための読書術」(ちくま新書)
2001.06
 なにを血迷うたかヘーゲル(フォー・ビギナーズ)を読もうとしたとたん昏倒してしまい、モウロウとしていたところ手にとったのがこれ。たしか「もてない男」という本を書いたひとだったかな。でも結婚なすったのでは? うそつきめ。でもおもしろいおもしろい。笑いました。ブックガイドとしてぜひぜひ活用し倒したいです。
 「レディー・ジョーカー」が多くの読者を獲得した理由に関しては、古谷野敦の考えはまちがっています。古谷野敦もまたインテリ寄り、評論家寄り、出版社というかディストリビューター寄り、はっきり書けばオヤジくさい読みかたから自由ではないです。
 「薔薇の名前」が「読まなくていいリスト」に入ってる。笑う。まあ冷静になればそれほどでも、とわたしも思います。
 三大(アンチ)ミステリと呼ばれる作品も読まなくていいリストに入ってる。……黒死館殺人事件はケチョンケチョン。ドグラ・マグラは「長すぎる」、虚無への供物は「だから何なんだ」、とある。笑う。なるほどね。黒死館はともかく、他のはおもしろいからべつに読んだっていいじゃん。少なくとも「バカのための読書術」よりは絶対におもしろい。

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岡崎太威さま制作のWeb用フリー画像を使用させていただいています。
(1999年発行・P-Gaah So-net 会員50万人突破記念号CD-ROM収録)



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